一人一人の道徳的心情を深め,豊かな人間性を育むための道徳の時間の指導はどうあればよいか
=道徳の時間における「心のノート」の効果的な活用=
道徳   鹿児島市立長田中学校
 
1 主題設定について
  本校では「豊かな人間性をもち,自ら学び・考え・判断し・行動できるたくましい生徒の育成」を教育 目標としている。市の道徳教育目標を研究主題とし,本校の教育目標を具現化するために「心のノート」 に着目した。「心のノート」は全教育活動を通じて活用できるものであるが,特に道徳の時間に活用する ことにより,一人一人の生徒が,日常的に道徳的価値に基づいて,自己の生き方を考えていくことができ るようになるのではないかと考えた。そこで,「道徳の時間における『心のノート』の効果的な活用」を 副題とし,実践研究に取り組んだ。
 
2 研究の実際
 (1) 主な活動 
    @ 校内道徳部会
       6月11日(水)・・・研究主題の設定と方向性の確認
       7月29日(火)・・・「心のノート」の活用の検討
       9月 1日(月)・・・授業者の決定と「心のノート」の年間指導計画への位置づけ
    A 研究授業及び授業研究
     10月 6日(月)・・・第1回研究授業,授業研究
     10月27日(月)・・・第2回研究授業,授業研究
     11月 7日(金)・・・初任者研究授業,授業研究
     11月11日(火)・・・第3回研究授業,授業研究
     11月19日(水)・・・職員研修「研究のまとめ」
 
 (2) 研究授業 
 
1 日時 平成15年11月11日(火) 5校時 1年3組
2 主題名「広い心で」 資料名「ふと目の前に」
3 授業展開にあたって
 (1) 資料の概要
    本資料は森繁久弥氏が主演を長く務めてきた「屋根の上のヴァイオリン弾き」での上演の際の体
   験について書かれたものである。一番前の席で下を向いている若い女性に対して役者らは寝ている
   と勘違いをする。芝居が終わり,アンコールになったとき,彼女が全盲の人であることに気づく。
   彼女は懸命に役者たちに拍手を送った。役者たちは,自分たちがとった軽率な行動を反省し,涙ぐ
   むばかりだった。
 (2) 本時の指導目標
    勘違いしてしまった「わたし」の心の動きを通して,ものの見方,考え方には,限界があるこ
   とに気づき,相手の個性や立場を尊重しようとする心情を育てる。
 
4 教科や他の領域との関連

 

道  徳

教  科

特別活動

総  合

課  外


一学期

 

主題 あいさつの大切さ


主題 温かい心づかい

主題 真の友情

主題 異性を思いやる心

主題 思いやる心のリレー


主題 広い心で
資料 「ふと目の前に」



主題 人の支えとなる心



 

【音楽】
合唱コンクー ルに向けて

【国語】
討論ゲーム


【保健体育】
体育大会練習


【保健体育】
 球技







 


  宿泊学習

  弁論大会

 合唱コンクール

【学活】
私と友達

体育大会


 文化祭

【学活】
人と個性

【学活】
中学生活の悩み

 









職業調べ
 職業人にイ ンタビュー をしよう


地域の文化等をグループで調べる




 

部活動開始

合唱コンクールに向けての練習

三者相談
   (夏休み)

体育大会に
向けての練習



三者相談







 




二学期



 

三学期
 
 5 本時の実際       
                      内は「心のノート」を活用した内容
                      


過 程
 


学習活動
 





予想される生徒の反応
 


指導上の留意点
 


備考
 







 



意識化

 


1 「心のノート」p54
  の絵について考える。

2 円柱をいろいろな方 向から見る。
 







 


・「心のノート」の絵
 は何に見えるか。  

・円,長方形 

 


○人によって見方・考え
 方が違うことに気づか
 せる。       
○見る角度によっていろ いろな形に見えること に気づかせる。


心のノート

PCによる表示












































 































 

3 資料への関心を高め る。

4 前半の資料を読み,「わたし」(役者)が行 なっている行為につい て考える。  

 下を向いている女性
 の近くで,舞台を強く 踏んだり,大声でセリ
 フを言ったりしたのは どんな気持ちからか。         

5 後半部分の資料を読 み,彼女が全盲である ことがわかり,そして 懸命に私たちに手をた たいてくれているのを
 見たときの「わたし」 の気持ちを考える。




12










 






・女性を起こしてやろ  う。
・自分たちをばかにして いる。
・いやな気持ち。
・他のお客にも失礼だ。
・嫌がらせをしているの か。
・とんでもない客だ。






・本当に申し訳ないこと をしてしまった。
・勘違いをしてしまって すまない。
・目が見えないにもかか わらず,芝居を見に来 てくれてありがとう。
・あなたの前で大声を出 したりしてすまない。






・素直な気持ちが足りな かった。
・相手を思う気持ちが足 りなかった。
・自分勝手であった。
・相手の気持ちをわかろ うとしなかった。
・相手の意見をよく聞か なかった。

○資料の写真を示す。
○資料は作者が一方的な 見方をしてしまったこ とによる出来事である ことを知らせる。


○「わたし」(役者ら) の女性に対する憤りが 生じていくことをわか らせる。


 

○誤解に気づいたことを 捉えさせる。

○舞台の上からだけの判
 断,一方的な見方であ
 ることに気づかせる。

○自分の行ないの後悔と 女性への感謝をしっか りと捉えさせる。

○ワークシートに「わた し」の気持ちを吹き出 しの形で書かせる。



○アンケートの結果を示 す。

○「心のノート」p56の 上段の問いかけを読み, 自分を振り返らせる。


○各自ワークシートに書 かせる。

 

写真


PCによる表示

全体







全体

PCによる表示












PCによる表示
心のノート



個人


 





12









 








 

 「ついにたまりかねて,わたしは彼女の前まで行って,しゃがみ込んだ。」このとき「わたし」は彼女にどんなことを言ったのだろうか。
 








 












 

6 この資料やアンケー トの結果から,自分を ふり返らせる。

 今までを振り返り,一
方的な見方で,人を誤
解し,気まずい思いを
したことはないか。ま
たそのとき,どんな気
持ちが足りなかったの
だろうか。     
 




15







 





 

意欲化

 

9 教師の説話を聞く。   
 

 





 





 

・広い心で人をわかろう とする自分になれるよ うな話で終わる。

 

全体



 
 6 授業研究                                     
  <「心のノート」の活用に関して>                          




 
・ 「心のノート」(P54の絵)を導入で使うことで,人により見え方が違うことがわかり,本時 の目標への意識化が図れた。                         
・ 価値の追求から自覚化へつなげるために「心のノート」(P56の問いかけ)を使うことにより, スムーズに資料から離れることができた。                 
・ 指導計画において「心のノート」の位置づけが明確にされておりわかりやすかった。 
                                            
  <その他のことに関して>                              





 
・ 発問の精選が行われていた。                          
・ 資料の後半を教師が資料を見ずに口頭で生徒に語りかけることで,生徒のその資料の内容を理
 解させることができた。                               
・ 生徒へのアンケートは生徒の心の矛盾を出させてあり,そこを深められればもっとよかった。 ・ 展開の場面で予想できない生徒の反応については「くやしい」等の単語が多かった。その単語  についてもう一度聞き返し,揺さぶりをかけてもよかったのではないか。   
 
3 研究の成果と今後の課題
 (1) 研究の成果
    ・ 「心のノート」を導入で活用することにより意識を高めることができた。
    ・ 「心のノート」を終末で活用することで自覚を促し,本時で学習したことを明確にすること      ができた。
    ・ 年間指導計画の中に「心のノート」の活用を位置づけ,計画的に全学級で道徳の授業を行った。    ・ 行事等を行う事前指導で「心のノート」を活用することにより,その行事の目的を生徒たちが     自覚し,取り組むことができた。
      (例)・ 職業インタビューで,「考えよう『働く』ということ」 
         ・ 体育大会の関係で,「集団,そして一人一人が輝くために」等
    ・ 「心のノート」の内容に本校独自の学校行事の写真等を加え校内に掲示することにより,生徒     の道徳的価値を高めることができた。
 (2) 今後の課題
    ・ 「心のノート」を活用する場面を記入した略案等の作成 
    ・ 「心のノート」を生かした学校行事への取り組み 
    ・ 3年間を見通した「心のノート」の記入と保管の仕方 
 
4 おわりに 
  本校では研究テーマに基づいて道徳の研究授業を中心に,「心のノート」の効果的活用について研究を 重ねてきた。その結果「心のノート」の良さを知り,道徳の時間にはどの学級も「心のノート」を準備し, 毎時間活用するようになってきた。また,その時間以外においても活用する学級が増えてきた。今後,「心 の教育」という視点に立ち,道徳の時間はもちろん全教育活動を通して「心のノート」の活用をさらに深 めていきたい。
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